第28回 公演記録 
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第28回  【 ほろ酔い寄席 】 平成23年6月19日(日)
住吉区民ホール
6月19日(日)に住吉区民ホール『住吉ふれあい亭』で
三代目桂春団治師匠を囲む会と住吉区コミュニティ協会と共催で開催されました。
桂 福丸

道具屋  
今回のトップバッターは福丸さん。
今回でほろ酔い寄席に二回目のご出演です。
根多は皆さんご存知の『道具屋』。
演者によっては、露店風景にいろいろ入れる工夫もあり
結構ギャグも満載ののお噺ですが、
福丸さんは、比較的オーソドックスに演じられ、
新人らしく良かったです。


桂 春雨
短命
続いて春雨さん。『短命』と言うお噺。
十一屋の養子が、またまた早死にしてしまう。
これで三人目。何故こんなことになるのか?
訊ねてみると、女房が美人だからとの返答。
しかし、その理由がどうしても判らず、根堀り葉堀り
問いただすと、やがて美人と短命の因果関係が明らかに。
艶笑噺でもなく、少し色っぽいお噺。
春雨さんにぴったりな感じでした。


桂 一蝶
 『餅屋問答』  
中トリには、一蝶さん。
今回の根多は『餅屋問答』。
世話好きで餅屋を営む親父さんが、
男を臨時の住職にしてしまう。
その男がまたいい加減な奴で
修行もせずにグータラに過ごしていると、
越前・永平寺の学僧が問答を申し入れてくる。
禅宗では、この問答に負けると、
住職は唐傘一本で寺を放り出されるのだ。
そこで、餅屋の親父さんが和尚になりすまして
学僧と問答対決をするのだが、
問答とは無縁の餅屋さんの勘違いの受け答えと
それをまた勘違いの解釈をする学僧のちぐはぐさが
この落語のクライマックスになっている。
リズミカルに運ぶ愉快なストーリーは
仏教的には大変良くできたお噺だそうで、
一蝶噺になっていました。

〜〜 中入 〜〜

桂 小春団治
失恋飯店
(ハートブレイクホテル)
中入り後のご出演は小春団治さん。
お得意の創作根多は『失恋飯店』(ハートブレイクホテル)。
登場する中国語のニュアンスを伝えるため、
中国語の部分のみ漢字の音読で語られる日本初の漢文落語?。
映画会社の赤羽と岸田は、中国電影公司の王氏と日中合作映画の
打ち合わせを進めるが、
中国人プロデューサー王氏が、ひらがなの混じらない
漢字で喋るというのがミソ。渡航、洋上、甲板。空港。送迎。
「高級乗用車常用、道路渋滞」、冒頭から新感覚派というか日記文学というか、
てきぱきとしながらも抒情あり、しかも笑える。王氏は北新地の高級クラブで
働く女子大生に惚れてしまう。「下心増大、海綿体充血。結婚決意」。
今回も小春団治ワールド全開で
会場からは大きな拍手ず沸き起こりました。


桂 福団冶
 『一文笛

トリは福団冶さんの『一文笛』。
実はこのお噺は、桂米朝さんが昭和34、35年頃の
作った創作です。もはや「古典」になったと言える名作です。
腕利きのスリの人情話。
■「貧乏はしても、盗みをするよぉな子どもには育ててないはずや。お前ら
うちの子やない、出て行け」ちゅうねや。長屋のもんが謝ってやっても聞く
よぉな親父やあらへん、子どもがな、泣いて「覚えはない」と言ぃ訳しても、
現に懐から笛が出て来たんやさかいしゃ〜ないがな。
■締め出されて、泣いてたと思たらな、泣き声が聞こえんよぉなったんで近
所のもんが出て見たら……、子ども井戸へ身ぃ投げたで。
■長屋のもんがビックリして、じきに引き上げた。息は吹き返したけれども、
どっか打ちよったんかなぁ、ズ〜ッと寝たきりで未だに気が付かん。わしゃ
仕事から帰って来て、この話聞ぃて、お前が来たっちゅうこと聞ぃたさかい
「こらひょっとしたら秀の仕業や」と思て出て来たんやが……
■おい、お前、何ぞえぇことでもしてたよぉに思てんのと違うか? 子ども
が可哀想やと思たら、高々五厘か一銭のオモチャの笛、何で銭出して買ぉて
やらん。それが盗人根性ちゅうねや。
■子どもが死んだら、お前、どないすんねや?●す、すまん■わしに謝った
かてしゃ〜ないやないかい●堪忍してくれ……
 左手が内懐へ入ったかと思うと、匕首(あいくち)を抜き出しまして、右手
の人差し指と中指を敷居の上へ、乗したかと思うと、これをポ〜ンッ!
■な、何をするッ……●おら、今日からスリやめる、盗人やめる■おい、紐
持って来い、紐。指の根元グ〜ッとくくれ、血が止まるまで……。思い切っ
たことやりやがったな、こいつ、えぇか、しっかりくくれ。
●わしゃ盗人よりほか、何にも知らん人間や。今日から万事頼む■分かった。
お前だけの人間や、どんなことがあっても一人前の男にしてみせる、じきに
医者行け医者へ、でな、血が止まって始末してもろたら、あしたでも明後日
でもえぇ、うちへ来い、何ぼでも相談に乗ったるさかいな。
うまい語り手の、筋書きのいい噺は何度聴いても、うなってしまいます。


〜〜写真と解説は、「囲む会」より提供いただきました〜〜
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