第20回 公演記録 
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第20回 記念公演 【 ほろ酔い寄席 】 平成20年10月25日 (土)
 「住吉区民ホール」にての開催。
桂 咲之輔
東の旅〜発端
最初のご出演は咲之輔さん。
上方落語家がまず最初に挑戦するのがこの根多だそうです。
▼(ボン)さて、例によりまして喜六、清八といぅ両名の大阪の若いもん、だいぶ時候もよおなつたんで 「ひとつお伊勢参りでもしょやないか」 といぅええ加減な連中がありましたもんで・・・・上方落語に付きものの見台、膝隠しに、ハリ扇、小拍子を「ツ・ポポ・ボン、ツ・ポポ・ボン」と
打ちながら調子良く語られるのは、むかし落語が大道芸やった頃の名残で、小拍子に合わせて声の調子も高めになり、ざわついた雑踏でもよく通ったんやそうです。
咲之輔さん元気一杯のお噺でした。

桂 福車
粗忽長屋
続いて『粗忽長屋』(そこつながや)を演じました福車さん。
死んだ本人が本人の死体を担ぐ。と言う福車さんならではの不思議なお噺で場内大笑いでした。原話は寛政年間の笑話本『絵本噺山科』にあります。
その内容は、お前が死んでいるぞ、と言われた男があわてて現場に駆けつけると、むしろを被った死体がある。慌ててめくつて見て、 「ああ、よかつた。おれではなかった」と一安心、というものでこれに様々に肉付けがほどこされ、現在の噺になったそうです。

桂 春雨
七段目
中入り前は、春雨さんの『七段目』。

芝居が大好きの大家の若旦那。大旦那に説教され二階から一歩も出るなと言いつかります。しかし本人は芝居のまねが出来ると呑気なものですが、相手がいない。そこに丁稚の定吉。これも無類の芝居好き。二人で忠臣蔵・七段目のまね事を始めますが、最後は二階から転げ落ちる。
■何や? 二階から赤いもんが落ちて来ましたで、どないした どないした?
おぉおぉおぉおぉ、定吉やないかいな、また目ぇ回しとおるがな、しっかりせんかい
★あ〜、あ〜、わたしには勘平さんといぅ夫のある体
■丁稚に夫があつてどないすんねん、何を言うとんねん。ははあ〜、そぉか、うちの倅と二階でまた芝居の真似でもして落ちて来たんやな。
■この梯子段の天辺から落ちたんか?
★いいえぇ、七段目。・・・と言うさげ。大爆笑でした。

〜〜 中入 〜〜

三代目桂春団治師匠の兄弟弟子である、露の五郎兵衛一門からも参加されることとなり、
 今回 露の都 さんが出演されました。
露の都
金明竹
中入り後のご出演は露の都さんで『金明竹』。
日本で第一号の女性落語家さんの登場です。おまけに六人の子の母親。そんな大変さをみじんも感じさせない天真爛漫な笑顔とにぎやかで可愛い『ようしやべる大阪のおばちやん』日常を紡ぐマクラは格別で 「都ばなし」 として一席にもなります。
このお噺は、主人が留守の時に来る客来る客に頓珍漢な断りをする丁稚を描く滑稽噺。最初は『大阪のおばちやん』のノリで場内大爆笑でしたが旦那を女将さんに代えてのストーリーが自然でキャリアの風格を感じました。女流落語家として最長現役記録を更新中です。

桂 春団冶 師匠
代書屋
最後は春団冶師匠の『代書屋』。春団冶師匠の十八番と言ってもよいお噺です。
●わての本職は ガタロだんねん
■ガタロ? 何でんねん、そのガタロて?
●なるほど、こらあんた分かりまへんわ。これな、胸のとこまでのゴムの靴履きまんねん。ほんで、川の中ヘザブザブ〜ッと入っていきまっしゃろ、ほで金網でな、川底をゴソ〜ッとすくてきてな、中から鉄骨の折れたやっちやら釘の曲がったやつやら靴の片っぽ選(よ)ってるやつおまっしゃろ。
■はぁはぁ、あれ 「ガタロ」言いまんのんあれ‥‥。えらいことやってなはったなぁ〜 あんた 「ガタ……」こんなもんいよいよ書きよぉがないわ……。こんなもんどない書いたらええや分らん
●どおでっしやろ 「ガタロ商を営む」 と
■ 「ガタロ商?」 もぉヤイヤイ言いなはんな、こっちゃよけややこしい。
■えぇ〜ツと 「川の中」 やないなぁ 「河川に」か… え〜 「河川に、埋没したる、廃品を回収して、生計を立つ」 と。こないしときまひょか
●なるほどなぁ〜。そおいぅ具合に書いてもろたらあんた、この商売がぐっと引き立つ
■もおどない書いてもおんなじことだ
● 「どない書いても」 てあんた 「生計を立つ」 て、ス〜ッと立ってるとこなんか気持ちがええわ。あッ どおでつしやろなぁ、その根元に巴焼きと減り止めとあしらおか
■そんなもんあしらう人おますかい。 場内大満足のお噺でした。

このお噺は実際に代書をしていた四代目桂米団冶が作った傑作根多です。
頭の 「儲かつた日も代書屋の同じ顔」 も米団冶作で粋な入り方です。
〜〜この解説は、会報誌「のざき」より〜〜
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